模試を受けると、結果には得点と一緒に偏差値が示されます。自分の偏差値を知ることで、志望校に合格できそうかどうか現在の状況が分かります。
「このままのペースで勉強していて大丈夫なのか?」
「足りない場合は、どのくらい勉強時間を増やせばいいのか?」
そのような不安を感じる場合は、自分の偏差値と志望校の総合偏差値とを比較して、目標に対して足りないところを補うために勉強時間を工夫しましょう。
今回は、自分と自分以外の得点が分かっている場合に使える一般的な偏差値の求め方をはじめ、自分の得点しか分からない場合の簡単な求め方もご紹介します。
全教科の分析をして大学受験を成功させましょう。
偏差値とは

大学を選ぶ目安などに活用する偏差値とは、同じ試験を受けた人の中で自分が何番目くらいなのかを計算するものです。
偏差値の求め方の手順

次に、偏差値の求め方を簡単にご紹介します。
偏差値は統計学に基づいて公式化されており、学力判定などに用いられます。
それぞれについて詳しく解説します。
- 平均点を求める
- 平均との差を求める
- 平方数を求める
- 分散を求める
- 標準偏差を求める
- 平均との差に10をかけて標準偏差で割る
- 偏差値を求める
1.平均点を求める
平均点は以下の公式で求めます。
全員の得点の合計÷人数=平均点
例えば100点満点の英語のテストを10名が受け、以下のような得点を得たとします。
自分…70点、A…100点、B…30点、C…40点、D…80点、E…50点、F…50点、G…50点、H…70点、I…60点
この場合の平均点は
(70+100+30+40+80+50+50+50+70+60)÷10=60
となり、平均点は60点です。
このように、平均点を計算するためには、自分の得点だけではなく試験を受けた「全員」の得点が必要になります。
平均点との差を求める
平均点が分かったら、続いて各点数の平均点との差を求めます。平均点との差は「偏差」とも言います。
平均点-得点=平均との差
先ほどの例を当てはめて計算すると、自分の得点…70点、平均点…60点なので、
70-60=10
となり、平均点との差は10です。
テストの得点が平均を下回っている場合はマイナスの値になります。
平方数を求める
平方数とは、同じ数字を2回かけることで得られる値のことです。2乗とも言います。
なお、平方数には以下のような数があります。九九に含まれる値などが分かりやすいでしょう。
0×0=0、1×1=1、2×2=4、3×3=9、4×4=16……
今回の例では、平均点との差について平方数を求めます。
平均との差×平均との差=平方数
これを計算式に当てはめて計算すると、平均点との差は10点なので、
10×10=100
になります。
この場合、得点から求められる平方数は100となります。
分散を求める
分散は、テストの得点がどのくらい散らばっているかを示す値です。以下の値で求められます。
全員の平方数の合計÷人数=分散
例の場合、各個人の平方数は以下のようになります。
※得点/平均点との差/平方数
自分…70点/10/100、A…100点/40/1600、B…30点/-30/900、C…40点/-20/400、D…80点/20/400(E以下略)
これを公式に当てはめると以下のようになります。
(100+1600+900+400+400+100+100+100+100+0)÷10=380
つまり今回のテストにおける分散は380です。
標準偏差を求める
標準偏差とは、分散の正の値の平方根のことです。
√分散=標準偏差
なお、平方根には正の値と負の値があり、以下のように2乗するともとの値になる数のことです。
√1×√1=1、√2×√2=2、√3×√3=3、√4×√4=4……
これを標準偏差の公式に当てはめて計算すると、
√380= 19.49358869×19.49358869
です。
つまり今回のテストの場合では、テストの平均点が60点、標準偏差がおよそ19.49点となります。
標準偏差は今回のテストについてのどのくらい得点にばらつきがあるのかを示しています。
分散は得点が2乗されて単位が「点の2乗」となるため、得点として単純に比較できません。
これに対し、標準偏差としてルートをとることで、単位が点に戻り比較しやすくなります。
また、自分の得点や平均点が全く同じだったとしても、周囲の得点状況が異なると標準偏差の値も変わります。
単純に標準偏差が0に近いほどばらつきが小さいととらえるべきではありません。
例として以下のような数学のテストがあるとします。自分の得点が70点で、平均点も60点と英語の例と同じです。
自分…70点、A…50点、B…0点、C…100点、D…70点、E…40点、F…20点、G…70点、H…90点、I…90点
平均点…60点
※得点/平均点との差/平方数
自分…70点/10/100、A…50点/-10/100、B…0点/-60/3600、C…100点/40/1600、D…70点/10/100(E以下略)
この場合の標準偏差を計算するとおよそ30.66点です。
つまり、英語のテストと数学のテストを比較すると、数学のほうが得点のばらつきが大きいと分かります。
このように標準偏差は過去のテストや他のテストなどと比較して状況を判断するものです。
平均との差に10をかけて標準偏差で割る
英語のテストの例に戻って、偏差値を求める前準備として、平均との差に10をかけて標準偏差で割るという計算をします。
公式:平均との差×10÷標準偏差=○○
自分のテスト結果に当てはめると、
10×10÷19.49=5.13
となります。
全員について計算すると以下の結果のような値になります。
自分…5.13、A…20.52、B…-15.39、C…-10.26、D…10.26(E以下略)
偏差値を求める
偏差値は「6.平均との差に10をかけて標準偏差で割る」の結果に50を加えた値です。
今回のテスト結果に当てはめると、
5.13+50=55.13
になります。
センター試験の5教科といったテストの成績に限らず、身長や体重などいろいろな要素は、統計をとっていくと中央に最も高い山ができる正規分布を描くことが知られています。
標準偏差が大きい場合は正規分布曲線のすそ野が広がり、小さい場合には中央に集中してとがったかたちになります。
いずれの場合も中央に山がくることは変わりません。そこで、あるテストを受けて成績が他の人と比べてどうだったのかを診断するために、偏差値が使われているのです。
全体を100として中心を50と考えます。成績で言うと、偏差値50の付近に最も人数が多く集まることになります。
また、模試は、本番の入試と全く同じメンバーで受けているわけではないので、入試時の偏差値とは必ず誤差があります。このように母集団そのものの影響による誤差を標準誤差と言います。
標準誤差が小さければ、より精度の高い情報と言えます。
標準偏差なしでも偏差値を求められる簡単な計算式

ここまで紹介したように、正確に標準偏差や偏差値を求めようとすると、自分のテストの得点以外に、全員の得点に対する情報も必要です。
しかし、必ずそのような情報が提供されるとは限りません。そこで、標準偏差が分からない場合でも簡易的に計算する公式を使って、おおよその偏差値を求める方法があるのです。
この公式の場合に必要なのは、自分の得点と試験の平均点だけととても簡単です。
計算式:50+(自分の得点-平均点)÷2=偏差値
自分の得点が70点で、平均点が60点だった場合を当てはめてみると、
50+[(70-60)÷2]=55
となります。
先ほど計算した偏差値が55.13だったので、おおむね合っていると言えるのではないでしょうか。
標準偏差なしで簡易的に算出するものなので便利ではありますが、もちろん正確な偏差値ではありません。
このような制限があるため、偏差値の目安をどうしても知りたい場合に限って使うのがおすすめです。
自分の偏差値を計算できるアプリやサイト

自分の偏差値を知る方法は、手で計算する以外に、アプリやサイトで求める方法があります。
複数名の得点が分かる場合
Keisan:カシオが提供している計算サイト。任意で行列の増減ができるので科目や人数を調節して偏差値の計算ができます。
https://keisan.casio.jp/exec/system/1308268612
5つの科目について得点と平均点を入力すると、おおよその偏差値が求められます。
http://ueo.pupu.jp/deviation/
自分の得点、平均点、標準偏差が分かる場合
自動計算:偏差値の考え方をはじめ、偏差値と順位の目安についての解説もあります。
https://calculator.jp/science/deviation
SSCalc :点数、平均点、偏差値、標準偏差のうち、任意の3つの要素を入力して残りの1項目を自動計算してくれます。
https://shge.github.io/sscalc/
現在の偏差値を計算した上で、志望校に合格に必要な勉強時間を把握したい場合
偏差値達成ツール:エイドネットが提供しているツール。目標とする偏差値に設定すれば、自分の偏差値をもとにこれから必要となる勉強時間が確認できます。
【テンプレートあり】エクセルを使えば簡単に偏差値を計算できる

偏差値や標準偏差、下方偏差などを求めたい場合、計算式は全て公式化しています。
エクセルにはそれぞれを求めるための関数が実装されているので、これらを使って数式を入力すると、簡単に知りたい数値を求めることができます。
以下のファイルは得点を入力するだけで偏差値が計算できるテンプレートです。
「模試の結果」と「目標の偏差値」を入力するだけで、必要な勉強時間が計算できるシミュレーター
偏差値は大学・高校・中学で異なる

偏差値は偏差値の求め方で紹介したとおり標準偏差で割って算出する値です。
偏差値=10×(自分の得点–平均点)÷標準偏差+50
そのため、どのような集団がテストを受けているのかによって値が変わります。
模試を例にとると、模試を受けた人全員のことを母集団と言います。
模試を受けるのがどんな人たちかによって偏差値は変わるため、相対評価であると言えます。
中学受験する小学生は限られていて、成績上位のメンバーが集まりやすいです。
一方、高校受験はほぼ全ての中学生が行うため、いろいろな成績の人たちが母集団になります。
大学も中学受験ほどではないにせよ全員が受験するわけではないため、受験者の集団は比較的成績上位者です。
つまり、似たような成績の人たちが集まりやすい順は中学受験、大学受験、高校受験という順序になります。この母集団の構成の違いが偏差値に影響します。
大学受験の偏差値について
高校生は進学する学生と就職する学生に分かれます。模試を受けるのは大学受験をする学生だけです。
現役の高校生のほか浪人生などが受験するため、母集団の成績は全体的に高めで上のほうの偏差値になるのは難しくなります。大学受験を控えていると、高校受験の時と比べ模試を受けた時の偏差値が下がってしまったり、偏差値が上がりづらいと感じたりすることがあるかもしれません。しかしそれは、受験者層の違いが影響している部分も大きいのです。
高校受験の偏差値について
高校は義務教育ではありませんが、ほとんどの中学生が受験します。そのため、高校受験のために努力してきた学生だけでなく、勉強不足の学生も含まれます。ある程度勉強していれば、中学受験や大学受験に比べると全体の中では良い成績になりやすく、その結果、偏差値は上がりやすくなります。
中学受験の偏差値について
大抵の小学生は公立の中学校へ進学するため、中学受験をする小学生は限られます。小さなうちから中学受験を見据えて勉強してきた子どもも多いため、成績上位のグループが母集団になります。周囲の受験生も勉強している人達が多いため、高校受験に比べて偏差値は上がりづらくなります。
内申点から偏差値は求められない

内申点は中学校時代の成績を、ある計算式により数値化したものです。
算出方法は各自治体により異なり、中学1年生からの成績を加味して評価する場合や、3年生の成績のみに重きを置く場合もあります。学校の成績はテストの点数などをもとに評価されて上位何割に5をつけるなど、ある程度のガイドラインがあります。
学校によってどんな成績のどんな学生がいるのかが全て異なるため、成績上位の学生が集まりやすい中学校であれば、成績がほどほどでも学力が上位ということもあるでしょう。また、同じ内申点だからといって、学校が違う学生であれば学力まで同じとは言えません。
偏差値も内申点も受験には重要な情報ではありますが、ある試験を受けた集団の中での立ち位置である偏差値と内申点とは全く性格の異なるもので、内申点から偏差値を求めることもできません。
偏差値は試験を受けた時の集団のうち、自分がどの立ち位置なのかを示すものです。一般的な偏差値の計算方法は手順が複雑なため、目安を知りたい場合には簡易的に求めることもできます。
大学受験の際の偏差値は上がりにくく、高校入試に比べると偏差値が下がってしまう傾向があります。偏差値は模試の受験者層により変動するので、偏差値そのものに一喜一憂せず本試験までの時間を有意義に使っていきましょう。
※現行のセンター試験は2019年度(2020年1月)の実施をもって廃止され、2020年度(2021年1月)から新方式「大学入試共通テスト」へ移行する予定です。